友だちと遊ぶ。勉強する。家族で過ごすーー。子どもやその家族が「病気だから」と諦めてきた日常の経験。TSURUMIこどもホスピスは、そんな「やりたい」ことに安心して取り組むための環境づくりをお手伝いしています。
「やりたい」が「できた!」に変わったエピソードを紹介していく本コーナー。今回は、2021年にこどもホスピスを卒業したmeiちゃんとそのお母さんに登場いただきました。
2021年2月21日、「こどもホスピスの魅力を伝えたい!」というmeiちゃんの声かけで「YouTube子ども向け生配信 みんな、きいて。つるみのこと」を配信しました。
meiちゃんとスタッフ・市川が構成を考え、ほかのスタッフも交えてみんなで配信をサポート。番組は、自作の紙芝居『TSURUMIこどもホスピスってどんなところ?』の発表からはじまります。物語は、入院中のうみちゃんが主人公。同じ病室の友人・つるちゃんにこどもホスピスを勧められ、どんな場所だろうと緊張するうみちゃんでしたが、大きな部屋でブランコに乗ったり、アイロンビーズやレジンで工作をしたり、かくれんぼをしたりするうちに、次第にホスピスで過ごす楽しさに気づいていきます。
ホスピスでの過ごし方が伝わる紙芝居の後は、館内を探訪する施設紹介コーナーや、ホスピスでの思い出を振り返るスタッフとのフリートークコーナーも。工夫を凝らしたプログラムは、たくさんの方にご覧いただくことができました!
配信から早1年。スタッフ・市川(いちかわ)とともに、ホスピスの利用を終えたmeiちゃん、お母さんと、当時のことを振り返りました。
——あのときは、たくさんの人に観てもらえたね! そもそも、どうしてYouTubeで配信しようと思ったの?
mei:クリスマスのイベントで、市川さんたちがYouTube配信しているのを見て、私も出てみたい!やってみたい!と思って。もともとYouTuberが好きで、入院中はそのとき流行っていた「24時間チャレンジ」やASMRの動画を観ていたんです。だから、自分で動画をつくることに憧れていて、配信にも挑戦してみたいな〜って。
お母さん:夢が叶ったんだよね。
mei:うん、でもめっちゃ緊張した!
——変に堂々としていたから心配したけど、途中から普段の感じに。
お母さん:部屋の外から見守っていた私たちの方がドキドキしていたかも(笑)。
——たしかに(笑)。つくってきてくれた紙芝居もとっても良かったな。あれはどうやってつくったの?
mei:一番に「安心して遊べる場所」ということを伝えたくて、自分の体験をもとにストーリーを考えたかな。登場する「つるちゃん」のモデルは、わたしにホスピスのことを教えてくれた友だち。配信を観てメッセージもくれて、うれしかったなぁ。
お母さん:長期で入院している子は、ベッドの上でもできる遊びとして、絵が手軽なんです。一緒の時期に入院していたお姉さんは、絵がすっごく上手で、meiも感化されていたもんね。
mei:今も毎日絵を描いてる。今日も時間があったら絵を描きたいなぁ。誕生日におばあちゃんたちにイラストマーカーをもらったし。最近は、YouTubeで輪郭の綺麗な描き方とかを観てる。
——これもそもそもの話になりますが、こどもホスピスを知ったきっかけって?
お母さん:病院にホスピスのパンフレットが置いてあることは知っていましたが、「こういうところもあるんだ」ぐらいで、あまり気に留めていなかったんです。その頃は子どもの入院と治療がはじまって、自分の気持ちに余裕もなくって、利用するなんて考えられなかった。でも、同じ病室だった子のお母さんに「素敵な場所らしいよ!」と紹介してもらい、興味が出てきました。当時、毎月病棟のプレイルームで、ホスピスのスタッフさんが「ゲームの日」という出張イベントをやっていたので、まずはそれに参加して。スマブラとマリオカートをやったかな(笑)。そこで、環境やできることを詳しく聞いて、行ってみようと思ったんです。
——来てみて、どうでした?
mei:行く前は正直嫌やったけど、来てみたらめっちゃ楽しい!
お母さん:体調もそこまでよくないのに、子どもは大興奮(笑)。そんなに走り回って大丈夫なん?ってくらい。病院のプレイルームとは違って、木のぬくもりがあって、とても開放的で、何より兄弟と遊べるのがいいですね。病棟ではいつもガラス越しに話していたから。ここでは、のびのびと遊べてとっても嬉しそうでした。友だちとも来れるしね。
収録:2021年12月4日(土)TSURUMIこどもホスピスにて
取材・執筆:MUESUM