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「やりたい」が「できた!」に

みんなで一緒にランチを食べられた!

友だちと遊ぶ。勉強する。家族で過ごすーー。子どもやその家族が「病気だから」と諦めてきた日常の経験。TSURUMIこどもホスピスは、そんな「やりたい」ことに安心して取り組むための環境づくりをお手伝いしています。

「やりたい」が「できた!」に変わったエピソードを紹介していく本コーナー。今回は、2021年にこどもホスピスを卒業した杏里香(あんりか)ちゃんとそのお母さんのアンニサさんに登場いただきました。卒業してからも、さまざまなかたちでホスピスに関わってくださっています。

2021年11月、ホスピスを利用する子どもとお母さんのためのランチ会を開催。杏里香ちゃんとお母さんのアンニサさんが、ごはんをつくりに来てくれました!

子どもたちがお絵描きや乗り物遊びで大はしゃぎするなか、お母さんとスタッフ・市川はつるみカフェのキッチンへ。この日のメニューは、インドネシア北部で食べられている大根と春雨のスープ「ソトバンドン」と、杏里香ちゃん一家の定番・グリルチキン、具材を自分で選んでつくるオープンサンドです。ハーブやチキンの美味しそうな香りがしてくると、みんな吸い寄せられるようにカフェに集合! スタッフや子ども、お母さんたちで「美味しいね〜」と声をかけ合う、楽しいランチ会になりました。

ソトバンドンに舌鼓を打ちつつ、スタッフの饗庭(あいば)とともに、杏里香ちゃんがこどもホスピスに通いはじめたときのことを聞いてみました。

▲「グリルチキンは子どもに人気なんですよ!」とお母さん。焼肉のたれとにんにく、しょうが、玉ねぎで味付けしたボリューム満点の一品
▲一方、おおきな部屋では、巨大な模造紙にたっぷりの絵具を使ったお絵描き大会が

——はじめて来てくれたのは、1年前かな。

そう、ちょうど新型コロナウイルスが流行し出した頃に、娘のがんがわかったんです。大阪では治療ができなくて、8カ月くらい東京の病院へ行っていました。抗癌剤治療中は、たくさんの人と会うことを制限されていたので、保育園もやめて、家か病院かという生活。そのときは入院のことで頭がいっぱいでしたね。しかも同時期にパパの中国の仕事がなくなったんですよ。私もどうしたらいいかわからなくなって……。そういうときに、こどもホスピスのことを知りました。安心して遊べる場所をずっと探していたので、パパが「1回行ってみよう!」と提案してくれて。

——来てみて、どうでした?

ここに来る前は「ホスピスは、先がない子どもが行くところだ」と思って、嫌だったんです。だって、治るから。でも行ってみたら「わぁ、楽しい〜!」って感動(笑)! それからは、お姉ちゃんも一緒に、家族で毎月利用するようになりました。コロナの感染拡大を防ぐために、1組のみの貸し切り状態で利用できたこともありがたかったですね。

——お母さんにも「楽しい」と言ってもらえるのは嬉しいです。

来たばかりの頃、スタッフの古本さんがたくさん話を聞いてくれて。いつも「ママどう?」って言ってくれるのが、すっごく嬉しい。「来て良かった!」ってなります。今は治療も終わって、3カ月に1回の検診はありますけど、こどもホスピスの利用を終えました。でも私、ずっと饗庭さんからのLINEを待っているんですよ(笑)。

▲ランチ会には、2組の親子が参加。美味しいごはんに会話もはずんでいます

——今回も、ご厚意に甘えちゃいました(笑)。

娘が病気になる前は、手づくりの料理を食べながら、友だちとホームパーティーをするのが大好きでした。だから、こどもホスピスを卒業するときに、スタッフのみなさんにお礼として料理を振る舞いたかった。それがランチ会の1回目でしたね。

——あのときのごはんも、すごく美味しかった! 以来、私たちから「料理つくって〜」と声をかけさせてもらっているんですよね。

はい。饗庭さんからのメッセージが来たら、「やった! またスタッフさんたちに会える!」と、親子で喜んでいます(笑)。私たちにとって、スタッフさんは家族みたいな存在。だから、ここが好きなんです。コロナも子どもの病気もあったけれど、素敵な出会いが何回もあって。良かったかなって。

▲ランチ会の後、「みんなで食べて!」とお土産に手づくりのシフォンケーキもプレゼントしてくれました!

収録:2021年11月19日(金)TSURUMIこどもホスピスにて

取材・執筆:MUESUM

撮影:衣笠名津美