ふりかえりビーズ&きょうだいビーズをおこないました

今回のふりかえりビーズ&きょうだいビーズは、認定特定非営利活動法人シャイン・オン・キッズさん(以下シャイン・オン!キッズ)が提供するビーズ・オブ・カレッジ プログラム*の一つになります。
*ビーズ・オブ・カレッジプログラムとは、治療の過程を色とりどりのビーズでつないでいき自分の治療の道のりを体現していくアート介在療法です。

ふりかえりビーズとは

「ふりかえりビーズ」は、治療経験をスタッフと一緒に話しながら振り返っていき、1つひとつ意味が込められたビーズでつないでいきます。つながれたビーズは、治療の記憶として目に見える形となり、自分はがんばってきたんだ、という勇気の証となります。治療経験を肯定的に再認識できるようになったり、自己肯定感の向上を目的とした取り組みになります。

医療機関によってビーズ・オブ・カレッジプログラムを導入している病院もあれば、導入していない病院もあり様々です。また、病院の外来では、タイミングによってはビーズを受け取れないこともあります。ふりかえりビーズは、プログラムに参加したことのない方、退院以降のビーズをつなぎたい方に向けて実施しています。

きょうだいビーズとは

病気を治療する患児のきょうだいに向けたものとなります。
日本では導入されていないプログラムでTSURUMIこどもホスピスがトライアルとして選ばれ、協働することになりました。

きょうだいビーズ

治療をする子どもが中心の生活となる中で、きょうだい自身は置いてけぼりになってしまうことがよくあります。習い事が続けられなくなったり、今まで住んでいた家から離れて祖父母の家で生活を余儀なくされることもあります。日常生活が一変してしまう中で、命をつなぐための治療をしている患児を心配したり、気持ちを消化できぬまま抱えこんでしまう鬱屈感など、それぞれのきょうだいに目や気持ちを向けていくことの大切さが問われています。病気が原因で家族の中の誰かが悪者になってしまわないように、バラバラになってしまわぬように患児、きょうだい、両親を丸ごと支援できる受け皿がまだまだ足りていないことが課題としてあります。

きょうだい自身が病気の治療によって変化してきたこれまでの生活を振り返り、がんばってきたことを目に見える形や会話を通して自信を持ってもらう機会を作れないか、きょうだいという枠ではなくその子自身を認めて、返してあげられる場を持てないか、と考えていました。

そういった中で、「きょうだいビーズやってみませんか?」シャイン・オン!キッズさんにお声をかけていただきました。

またプログラムのアドバイザーということできょうだい支援について連携協力をしている「しぶたね」さんにもご協力いただきました。

日本ではまだ導入されておらず、アメリカで活用されているきょうだいビーズを日本の文化や状況に合わせて、わかりやすい言葉に翻訳したり、どのように進めていくのが良いか手探りで進めてきました。スタッフ同士でロールプレイを行ったり、打ち合わせをする中で少しずつ形となってきました。こうして、子どもたちが参加する当日を迎えることができました。

イベント前の準備風景

当日は3組計6名の子どもたちが参加してくれました。
(治療を経験された方が2名、そのきょうだいが4名)

ふりかえりビーズをする人ときょうだいビーズをする人で分かれます。

ふりかえりビーズをする子どもから治療経験を振り返る中で「バクタっていう、世界で2番目くらいに苦い薬があって。それが嫌すぎてトイレに閉じこもってた。でもだんだん慣れてきていけるようになった」「最初はやりたくないって言ったけど、直すためにやらなあかんって言われた。」など本人の言葉でいろいろと教えてくれます。

その横では、きょうだいがきょうだいビーズをしています。動物が描かれたカードとビーズがテーブルに並べられています。それぞれの動物には「幸運」「希望」「成長」「リラックス」などテーマがあり、テーマに沿った会話をすることでカードとビーズが集まっていきます。

きょうだいのたくさんの言葉や思いを聞くことができました。面と向かって質問をしていたら難しい内容でもカードやビーズがあることでその子自身の言葉を紡ぐことができたのではないかと思います。入院中の離れ離れの時間は、きょうだいからするともしかしたら「ただの日常生活の延長上」なのかもしれませんが、少なからず日常は変化しておりがんばっていたことを「がんばったね」と認めてもらえることが自信や誇らしい気持ちに少しずつでいいので結びついていってもらえれば嬉しいです。

シャイン・オン!キッズ砂川さん
きょうだいビーズを日本でどのようなタイミングや場で進めるとよいか思案しておりましたが、毎日お子さんたちと関わっているTSURUMIこどもホスピスの皆さんのお力添えによって、日本での実施に向けた第一歩となったことを大変嬉しく思います。保育士の川戸さんならではのこどもの視点に立ったアイディアのおかげで、子どもたちがゲーム感覚で楽しみながら実施することができました。

当日は、TSURUMIこどもホスピスのスタッフの皆さんによるお出迎えからはじまり、話しやすいあたたかい雰囲気のなか、最初の自己紹介では自分の好きな動物を紹介しあったことで動物のカードやビーズを使う心の準備が整っていかれた様子でした。カードとビーズを通して互いに話しあう機会となっており、子どもたちとの対話とビーズから自分のがんばりを認めたり自己肯定感を育てる一助となっていたらと思います。

引き続き、きょうだいビーズのプログラム開発を進め、多くのお子さまに届けられることを目指していきます。

しぶたねさん
病院の廊下できょうだいさんと過ごす活動をしていると、ときどき点滴台に下げた長ーいビーズを見せてくれる子がいて、伝わってくる頑張りと、ちょっと誇らしそうな笑顔から、すてきなプログラムだなといつも思っています。

そしてときどき、そんなやりとりを、きょうだいさんが、ちょっと羨ましそうに、ときに尊敬のまなざしで見ていることがあって、きょうだいにもビーズのプログラムがあるといいのになあとずっと思ってきました。今回、きょうだいのためのビーズプログラムが日本でも始まることを聞き、とても嬉しく思っています。きょうだいさんに話しかけると「僕のことはいいんで」と硬い表情でゲームの画面を見つめる子がいます。小さなプレゼントを渡そうとすると「自分はいいから(病気の)妹にあげる」と話してくれる子がいます。病気のあるきょうだいがつらい治療を頑張っているのに、自分は楽しく過ごしていていいのかなと感じている子、入院しているきょうだいや付き添いの親御さんに長期間会えない寂しさや不安な気持ちにぎゅっと蓋をしている子にも出会います。
それぞれのビーズやカードを通して「あなた」のことを教えてもらえること、ビーズと一緒に、こうしてお話したことや、「あなたが大事」のメッセージをお守りのように渡せること、幸せなプログラムでした。こんな機会がつながって広がっていくといいなと思います。

ビーズを誇らしげな様子で見せてくれる子どもたちの笑顔は達成感で満ちあふれていました。

まだまだ試行錯誤が続くきょうだいビーズですが、今後もTSURUMIこどもホスピスで開催を予定しています。イベントというかたちではなく、参加してみたいという声があれば普段からでもできますのでご興味のある方はスタッフまでお声がけください。

ふりかえりビーズについて過去におこなった事例はこちらをクリック

この記事を書いた人

川戸 大智(かわと・だいち)

川戸大智

保育士