みなさま、こんにちは。スタッフの古本です。
先日、はじめてTCHに宿泊してくださったご家族が、とっても素敵な時間を過ごされていたのでご紹介します。
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ご宿泊から3週間前のこと。
「ほんとうは家族揃ってディズニーランドに行きたいんですが、一度も外泊したことがないので、いろいろと不安で……」とご相談くださったのは、根本的な治療方法がないという先天性の病気をもつお子さんのママとパパ。日常的に酸素チューブを使用していることもあり、家族では遠出をしたことがないとのこと。
ホスピスでは、いつも“子ども本人が楽しいこと”を第一に考えるのですが、この日、私はおふたりに「ママとパパは何がしたいですか? やりたいことはありますか?」と声をかけました。
このように、ご両親にやってみたいことを尋ねると、「いや……、私たちは……、何がしたいんかな……」と即答できない方も少なくありません。そんなときは、よく「ママとパパはごはん食べるの好き? 外食とか行くことありますか?」と聞いてみます。
「食べることは、好きですよ! でも、この子が産まれる前に焼き肉に行ったのが最後で、外食は長らくしてないですね。行きたいんですけど、酸素もあるし……」とママがぽつり。
そこからあれこれ相談を重ねて、ついに!
初のお泊りで、「スペシャルディナー」を行うことになりました。
コロナ禍の影響もあり、なかなか外食も難しい時期だからこそ、大人も子どもも一緒にゆっくり楽しい時間を過ごしてほしいーーそんな私たちの想いに共感くださり、腕を振るってくれたのが、難波の立ち呑みイタリアン「キッチン ナカジマ。」店主で、フレンチや和食、魚卸などを経験したシェフ中島宏幸さん。
お泊まり当日。
ハウス2階のキッチンからは、おいしそうな香りがぷんぷん。1階のオフィスにいるスタッフからは「わぁ、おいしそうな匂い! まるで2階にイタリアンレストランがあるみたいやね」という声も。
中島シェフが準備してくれたお子様用のお料理に、
「はやく食べたいー」アピールでお子さんも大喜び! ご両親も「こんなはーちゃん見たいことないね」と驚いていました。とっても喜んでくれている様子を目の当たりにして、私たちも嬉しくなりました。
家族全員が6月生まれということで、「お誕生日のお祝い」もしました!
とってもスペシャルな時間を過ごしていただくことができました。
後日、ママからは「おうちに帰ってからも、あの日の動画を何回見て、嬉しそうにしていました」というご報告もいただきました。よかった!
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未来のことは、誰にも予測できません。
だからこそ「今、この一瞬にかけること」を大事にしたいーーホスピスで楽しそうに過ごすご家族を間近で見ていて、「楽しみにできる何かがあることは、生きる希望だな」といつも感じています。
ホスピスに訪れる親御さんのなかには、「我が子がこんなに苦しい思いをしているのに、私たちが楽しんでいいんでしょうか?」とお話される方も少なくありません。いろいろな考え方があると思いますが、私は一緒に楽しんでいいと考えています。
以前、「自分のことで、ママやパパが悲しい顔するのが辛いねん」と教えてくれた子がいました。子どもたちは、親のことをしっかり見ています。親が子どもに「子どもには、笑顔でいてほしい」と思うように、子どもも親に対して同じ気持ちを抱いているのではないでしょうか? 「家族みんなで楽しむ」ーーこれからもホスピスでは、そんな時間をつくっていきたいと思います!
今回のスペシャルディナー実現にあたっては、準備段階から中島シェフにいろいろと相談に乗っていただきました。ありがとうございました!
古本愛貴子