シルクスクリーンとは
シルクスクリーンとは、「版」と呼ばれる細かく穴の空いたフィルムからインクを押し出すことで、自分だけの言葉や図案が印刷できる技法のこと。
紙やTシャツ、トートバッグのほか、水と空気以外の素材であればなんでも印刷が可能です。
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問いかけることを考える
問いかけて、答えが返ってくる。一見なんてことのないコミュニケーションですが、今回はそのやりとりの一歩掘り下げたものを子どもたちに体感してもらいました。
イベントのご協力をしていただいたのは昨年「レーザーカッターで水たまりの鏡をつくろう」を一緒にやっていただいたFabcafe Kyotoの皆さんです。
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建物が出版物!?
出版と聞くと、漫画や雑誌など紙の印刷物を連想しますが今回はシルクスクリーンを使って窓に質問を印刷してみます。つまり、自分の考えた質問を窓という出版物を通して別の誰かに問いかけることになります。そのため、誰がいつ読んでいるか分からず、答えを聞く機会ももしかしたらないかもしれません。まずはシルクスクリーンとは何ぞやということで全員で布に試し刷りをしてみます。
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試し刷りを終えて、シルクスクリーンや出版に触れたところでワークショップが始まります。
子どもたち、ボランティア、ホスピススタッフが一緒になって、一日限定「TSURUMIこども出版社」の社員として取り組みます。
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答えを他者に委ねること、その背景についてまず考えてみてそれぞれ子どもたちがどのような質問をしていくか考えていきます。「さぁ、どうぞ!考えてみてください」と言われても、何もない状態から考えることは大人でも頭を悩ませます。質問のレシピとして、「心が落ち着く瞬間は何ですか」というテーマを基に1つ考えていきます。その質問を分解して単語にした後、それぞれの単語を組み合わせて質問を作っていきます。作った質問の中で自分の中で気に入ったものをパソコンに打ち込み、アルミフレーム版に質問をシルクスクリーンで刻印していきます。初めて出会う機械に興味深そうな様子でじっと見つめていた姿が印象的でした。
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質問を窓に刷るためホスピス館内を見て周り、気になる場所や質問に関連する場所などを決めて実際に刷っていきました。1人で刷ることは難しい作業です。インクを持つ人、版を支える人、ヘラを使って刷る人など、それぞれが役割を持って印刷に携わります。社員同士で相談しながら自分で作った質問を自分で選んだ場所に目に見える形や痕跡として残していく、集中して作業に取り組んでいる子どもたちの表情は真剣そのものでした。きれいに印刷できるときもあれば、インクが薄かったり、文字が滲んでしまったりすることもあります。刷った質問は水拭きで簡単に落ちるので、自分の納得のいくまで何度も繰り返し行っていきます。その後、館内に印刷されたそれぞれの質問を見て回ります。
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どのようなことを考えて、この部分が気になった、など自分の思いや感じた気持ちを発表していきます。「これがいいよね」「あの部分はどうしてこの質問になったのか」発表を聞いた人たちからも感想や質問が出てきます。
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「なぜ発信をするのでしょうか」
この質問を考えた彼はこどもホスピスで経験したことを色々な人たちに伝えたいという想いで、自身のSNSでこどもホスピスについて情報を発信してくれています。また、学校の研究課題のテーマとしても取り扱ってくれています。実際に利用している方の声や想いが聞けることは、私たちにとっても貴重なものです。
私たちはこうして今も活動レポートとして、ブログという媒体で発信を行っています。なぜ発信をするのでしょうか。TSURUMIこどもホスピスをもっと知ってもらいたい、イベントの様子を知ってほしい、など色々と考えましたが、もっと根源的な何かを求めているような気がします。感情を言葉に紡ぐこと、形容することは時に難しさがあり、伝わり方が違ってしまうことで相手に間違った受け取られ方をしてしまうこともあります。ただ、自分が今感じている言葉にするには難しい想いや感情をどうにかして言葉や目に見える形として残しておきたい想いが強いのかもしれません。素敵な質問に出会えて、自分の感情と向き合う時間が持てました。
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おわりに
文章や写真ではお伝えできなかった質問がTSURUMIこどもホスピス館内に存在しています。ご来館の際は一度探してみてはいかがでしょうか。はっとする質問や「うーん」と考える質問など、様々だと思います。問いかけられた質問には答えはありませんが、質問を考えるときや印刷をしているときの子どもたちの真剣な表情が見れたことが一番の正解なのかもしれません。
後日、質問を見た人たちからは「めちゃくちゃきれいに刷られている」「どうしたらこんな質問が思いつくのかな」「記憶を消してもう一回やりたいゲームはマイクラかなぁ」などのコメントがありました。館内の色々な場所に質問がありますので、ご来館の際は窓ガラスに要注目です!
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FabCafe Kyotoのwebサイトにてイベントレポートが公開されております。執筆者はFabCafe Kyotoの山月さんです。クリエイターの方たちがTSURUMIこどもホスピスの子どもたちに届けたいものを丁寧な視点で書いてくれています。
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