お庭の芝生のベージュ色とは裏腹に、なんとも冷たい、寒い毎日が続いているTSURUMIこどもホスピスから、今日は少しだけ、温かくなるお話をお届けします。
昨年12月4日、つるみの原っぱに懐かしい赤と緑のキッチンカー「アンソニー号(石窯ピッツアAnthony)」がやってきました。
ホスピスのオープン当初から、原っぱの未来予想図には、なぜだかキッチンカーがありました。「病気や障害とか関係なく、ご近所さんもみんな広場に集まってて、そこにはキッチンカーもあって、みんな楽しそうにしている…そんな原っぱになるといいな…」
その後、想像していた風景は本当になりました!
みんなが集まる原っぱの、温かい空気感を一緒に作ってくれたお仲間が、キッチンカー(キッチンカーマルシェ協会さん)でした。「キッチンカーは色んな場所に移動するから、その土地の人たちと交流できるところがいいのよ。だから、ホスピスのことも色んな場所へ行って伝えていきたいんよ~」とアンソニー号のマスター、薮下さんが語ってくれたキッチンカー愛。そしてホスピス愛。薮下さんの愛に、いつも心の中で手を合わせていました。
コロナ禍、キッチンカーも大変な状況が続きましたが、アンソニー号が諸事情から2021年12月でおしまいになるというお話を聞いたのは、夏が終わった頃でした。アンソニー号から流れる音楽は、ピッツアの味と一緒に、たくさんの想い出をわたしたちに運んできてくれます。
「ここのは、ミミまで食べられるの」と言っていた、マルゲリータが大好きだったあの子。エプロンを着けて、パパとママに一所懸命ピッツアを作っていたあの子。大事な思い出の一日を、一緒に思い出せて語れるような、そんな時間ができないかな・・と、キッチンカーの2代目マスター小倉さんに、アンソニー号が終了する前に、最後につるみの原っぱに来てほしいとお願いをしました。小倉さんは快く「出店させてください」とお返事をくださいました。
コロナの関係でみんなをご招待することはできないけど、一緒にピッツアづくりを体験した子どもたちや、マスターのピッツアにゆかりのあるご家族をお誘いしました。「アンソニー号の最後の日に、一緒にピッツアを食べながら、おしゃべりしませんか・・・」と。
参加してくれたのは、4組のご家族と、当時の学生ボランティアのおひとり。今は、病院の小児病棟で子どもたちの療養生活を支えるお仕事につかれています。
同窓会というには大げさだけど、近況を聞きながら、どうしてる?どうしてた?そんな何気ないけど、温かな会話が繰り返された時間になりました。これってやっぱり同窓会かな…
子どもたちの成長した姿にも胸がいっぱいになりましたが、ご両親の心の中が揺れ動きながらも、前に向かっていったことにも気づかされました。
「あの時は、早く忘れたい、(病気になったことを)なかったことにしたいと思っていました。でも今は、忘れたくないと思っています」と、話されていたお母さんがおられました。闘病中の苦しさや痛さは、時を経て、今苦しんでいるご家族に何かできないか、という気持ちに変化していかれたようでした。
ホスピスという場が、そんな子どもたちの成長や、ご家族の気持ちの変化を見守っていける場所になっているんだ・・・と思うと、とてもうれしくなりました。どんなに苦しい時間を経験した子どもやご家族も、そのことがきっと、お互いを支えあえる力になる、そんな社会になっていくといいな・・・。
今回、ピッツアの日の同窓会のために、石窯ピッツアAnthonyさんからピッツア30枚分のご寄贈と、キッチンカーマルシェ協会の皆さんによりご協力いただいたご寄付を頂戴いたしました。本当にありがとうございました!
寒い日はまだまだ続きそうですが、皆さんどうぞ温かくして、一緒に春を待ちましょう。
また原っぱで、同窓会のように再会できる日を、ずっと楽しみにしています。
アシスタントケアマネージャー
市川雅子